ドコモにとって「顧客還元」は最大の

ドコモにとって「顧客還元」は最大の"攻め"である

2017.06.01

新料金プラン「シンプルプラン」や「docomo with」など、安価に利用できる料金プランを次々と打ち出すNTTドコモ。本年度は数百億円規模の顧客還元を実施するとしているが、なぜNTTドコモは料金プランに手を付けてまで、顧客還元を推し進めようとしているのか。

月額980円で利用できる「シンプルプラン」を提供

ワイモバイルやMVNOなど"格安"のサービスが急速に台頭している携帯電話市場だが、大手キャリアの側も相次いで料金施策に力を入れる様子を見せている。中でもここ最近、相次いで"攻め"の料金プランを打ち出しているのがNTTドコモだ。

同社が最初に打ち出したのが、4月27日に発表された「シンプルプラン」と「ウルトラシェアパック30」の2つ。中でも大きな話題となったのがシンプルプランである。

NTTドコモは4月27日に、新料金プラン「シンプルプラン」と「ウルトラシェアパック30」を打ち出している

これは、家族で主回線の通信容量をシェアする「パケットシェア」の仕組みを利用しているユーザーのみが契約できる新しい料金プラン。「カケホーダイ」「カケホーダイライト」などと比べると、通話定額の範囲が家族同士のみに制限され、家族以外に電話をする時は従量制の料金体系となるが、その代わり月額980円と非常に安い料金で利用できる。

実際この料金プランを、データ定額サービスの「シェアパック」を契約していない子回線に適用した場合、シンプルプランとspモードの料金(月額300円)、主回線のシェアパックを共有するのに必要な「シェアオプション月額定額料」(月額500円)を合わせた合計が1,780円となる。通話定額こそ限定されるものの、LINEの無料通話などを活用することにより、子回線であればMVNOに近い料金で利用可能になるわけだ。

シンプルプランを家族で利用した場合、最も安価なデータ定額サービス「シェアパック5」を用いると1人当たり平均3,513円、子回線に限れば1,780円で利用できる計算となる

そしてもう1つのウルトラシェアパック30は、昨年より提供されている、大容量のデータ通信容量を安価に利用できるデータ定額サービス「ウルトラパック」の新プラン。パケットシェアで利用する家族向けの「ウルトラシェアパック」はこれまで、50GBの容量を月額1万6,000円で利用できる「ウルトラシェアパック50」が最も安価であった。

だがウルトラシェアパック30は、それより容量が30GBと小さくなるものの、月額1万3,500円で利用できる。ウルトラシェアパック30の下のプランとなる「シェアパック15」は月額12,500円であることから、1,000円プラスするだけで倍の容量が利用できる計算になる。

指定の端末を購入すると毎月1,500円割り引かれる「docomo with」

NTTドコモが実施したのはこれだけではない。5月24日には新しい料金プラン「docomo with」を開始すると発表し、やはり大きな話題を呼んでいる。docomo withは、あまり機種変更をせず、1つの機種を長く利用する人向けのプランであり、指定した端末を購入することで、毎月の基本料金が1,500円値引きされるというものだ。

しかもいわゆる"縛り"などはなく、2年以上経過してもdocomo with対象外の機種に機種変更しない限り、1,500円の割引が継続されることとなる。シンプルパックの例として説明したパケットシェアの子回線を例に挙げると、月額1,780円からさらに1,500円が引かれるので、月額280円という激安価格でNTTドコモのサービスが利用できてしまうのだ。

docomo withは対象端末を購入すると、月額1,500円の割引が期間の縛りなく受けられるようになる

その代わり、購入できる機種はあくまでNTTドコモが指定したものに限られる。当初の対象機種となるのは、同日に発表された「arrows Be F-05J」と「Galaxy Feel SC-04J」の2機種。いずれも性能が抑えられたミドルクラスのモデルであり、iPhoneなどのハイエンドモデルは対象になっていない。

それには理由がある。docomo withは、端末に「月々サポート」などの端末購入補助を適用しない代わりに、基本料を割り引く仕組みなのだ。それゆえ対象となる端末は、性能が高くない分元々安価で、購入しやすいものに限られている。高額なハイエンドモデルを端末購入補助なしに買える人は少ないだろうから、今後もdocomo withの対象機種はミドルクラス以下の端末となる可能性が高いといえそうだ。

docomo withの対象になるのは「arrows Be」と「Galaxy Feel」の2機種。いずれもミドルクラス相当のモデルで、割引なしでも4万円を切る価格で提供される

ちなみにdocomo withの対象端末を購入した後、SIMフリースマートフォンや中古スマートフォンなどに変更した場合でも、値引きは継続されるとのこと。それゆえあまり機種変更しない人だけでなく、自ら好みのSIMフリースマートフォンを選びたいというハイリテラシーユーザーにも、人気が出そうなプランだといえる。

お得感を打ち出した顧客還元でユーザー流出を阻止

NTTドコモがこれだけ大きな割引施策を次々と打ち出しているのには、総務省がNTTドコモだけでなく大手3キャリアに対し、"お客様還元"を求めていることが挙げられるだろう。

従来大手キャリアは、あくまで新規顧客の獲得を目的として、端末をいかに安くするかに値引きの重点を置いてきたが、一方で収入の要となる毎月の通信料を下げることには否定的な対応を取り続けてきた。

だが携帯電話料金の引き下げを検討するべく、一昨年に実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」など総務省の有識者会議では、そうしたキャリアの端末値引き施策が、端末を頻繁に買い替える人だけが優遇されるなどの不公平感を生むという指摘が多くなされていた。

そこで有識者会議ではキャリアの端末値引きを大幅に抑制し、値引きを減らしたことで浮いた利益を通信料の値下げなど、既存顧客への還元に回すべきという意見がまとめられていった。

そうした総務省の意向はガイドラインによる端末の実質0円販売の事実上禁止などによって実際に反映され、大手キャリアは顧客還元をやらざるを得ない状況となっているのである。NTTドコモも昨年度は300億円規模、今年はさらに額を増やして数百億円規模の顧客還元を実施するとしており、シンプルプランやdocomo withも、そうした顧客還元の一環となるようだ。

NTTドコモは今年、数百億円規模の顧客還元を実施するとしており、一連の新料金プランはそうした顧客還元の一環となるようだ

だが単純に通信料を下げてしまうと、当然のことながら業績に大きな影響を与えることとなる。それゆえいずれのサービスも、収益に与える影響を可能な限り軽微なものにしつつ、ユーザーにお得感を打ち出す工夫をしていることが分かる。実際、シンプルプランは家族契約のユーザーのみに対象を限定し、なおかつ通話定額の相手も家族内に絞っている。またdocomo withも、端末の値引きをせず、対象機種もミドルクラスに絞ることでユーザーを限定しようとしていることが分かる。

そしてもう1つ、最近では大手キャリアから、MVNOや他社のサブブランドなど、より安価なサービスへとユーザーが流出する傾向にあることから、顧客還元は大手キャリアにとって市場競争を勝ち抜くための重要なテーマにもなってきている。なぜなら安価なサービスにユーザーが流出するよりも、多少利益を減らしてでもユーザーにお得さを打ち出すサービスを提供し、自社内にユーザーをとどめておいた方が、競争上有利となる可能性が高まっているからだ。

特に最大手のNTTドコモは、顧客を流出させない"守り"こそが最大の攻めとなるだけに、今後も顧客還元を積極的に展開してくると考えられそうだ。それによってNTTドコモ、ひいては大手キャリアの料金が下がってくれば、格安なサービスが有利となっている現在の市況にも、変化が見られるようになるかもしれない。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu