テレビCMでイケイケのUQ mobile、内心は危機感ありの意外さ

テレビCMでイケイケのUQ mobile、内心は危機感ありの意外さ

2017.06.02

テレビCMの高感度ランキングで上位を獲得し続けるUQ mobile。CM効果で認知度も向上し、UQ mobileの契約者数は急増している。格安通信市場において、短期間で大きな存在となったUQ mobileは絶好調といったところ。しかし、悩みは尽きないようだ。

写真左からピンクガチャ、永野芽郁さん、深田恭子さん、野坂章雄社長、多部未華子さん、ブルームク

認知度向上で急激に成長

UQ mobileのテレビCM「3姉妹シリーズ」が好評を得ている。運営元のUQコミュニケーションズは、CM総合研究所の調査結果を引き合いに出し、7カ月連続でトップ10入りしたとアピールする。昨年の10月25日から放映がスタートしており、ずっと人気を保ったまま推移していることがわかる。

テレビCM効果は抜群だ。UQ mobileの認知度はちょうど1年前までわずか24%だった。それが新CM開始後の昨年11月には61%、今年3月時点では89%にまで上昇。多くの人に知られる存在となった。結果として、昨年10月には30万契約程度と推測されるが、今年度には100万の大台を目指せるところまで来ているという。

UQモバイルの認知度はテレビCMをきっかけに急上昇した

もちろん、認知度向上が契約者増にそのまま結びつくわけではなく、様々な取り組みを進めてきた結果でもある。販売端末にiPhone SEを加えたり、UQ学割を導入して学生向けのプランや、5分かけ放題の「おしゃべりプラン」といったサービスも出したりしてきた。顧客とのタッチポイントも拡大。取扱量販店を増やすとともに、対面で接客対応をする「UQスポット」も半年強で67店舗まで増やした。一連の施策は半年ほどで行ってきたことである。いかに短期間で急成長を遂げているかがわかるだろう。

この半年で様々な施策を展開。本気を出し始めたようだ

さらなる成長に向けて

さらなる成長に向けて手を緩めることもない。今回、新たにUQ家族割を導入する。親回線が対象の料金プランに入ることで、子回線の月額基本料が500円割引きされるということである。家族4人であれば、子回線は3回線となり、毎月1,500円が通常よりも割り引かれることになる。

NTTドコモを例に挙げ、UQ家族割を導入した際のお得さをアピール

端末ラインナップも増やす。省エネ液晶のIGZOディスプレイを搭載した「AQUOS L2」(6月2日発売)、耐久性を高さをウリにした「DIGNO V」(7月中旬発売)を新たに導入。サービス面でも、既存のサービスをセットにした「UQあんしんパック」(遠隔操作案内、クラウドバックアップ、SNSセキュリティ)、「家族みまもりパック」(SNS監視、みまもりサービス)を新たにリリースする。

AQUOS L2
DIGNO V

セットサービスは家族割の普及を図る側面が強そうだが、UQのミッションとなる「安心、快適、高品質な通信ライフをみんなのものに」に沿ったサービスともなる。さらに、タッチポイントとなるUQスポットも2017年度中に120店舗まで増やす方針だ。

UQ mobileの課題

ここまで順調に成長してきたUQ mobileではあるが、ライバルのワイモバイルに追いつくには課題がないわけではない。

テレビCMで申し分のない認知度となったが、問題は契約に結びつけるためのタッチポイントである。現状は、ウェブ、電話、量販店、UQ スポットが柱となり、このうち、量販店での契約が最も多いとする。しかし、量販店では気が引けるという人もいるとし、そのためにUQ スポットの拡大は至上命題となっている。

大手の店舗数を目指すことはないというUQ mobile。果たしてどうするのか

だが、UQコミュニケーションズの野坂章雄社長の言葉を聞くと、店舗数を増やし続けることは考えていないことがわかる。

「契約に当たって、どこに行けばいいのかわからないというお客さんがいる。(スマートフォンは)リアルタッチが必要な商品だと思う。ただ、(UQスポット)を200店舗にしたところで、全国にあるドコモショップには敵わない」(野坂氏)。

さらに、auショップの活用は考えていないとした上で、「携帯ショップを1000店舗作らないといけない時代なのか。(中略)1県1店舗ほしいとは言ったけれど、100店、200店から、さらに増やして1000店にすることは絶対にないと思う」(同氏)などと話す。

これから先を見据え、ワイモバイルに追いつくには、かねてから行われてきたリアル店舗の拡大を目指すだけでは、いつまで経っても追いつけない。店舗開設には時間がかかり、追いついた頃には、格安通信市場がどうなっているかわからない。おそらく、こうした見通しがあるからこそ、別の手立ても必要だということなのだろう。

ではどうするのか。現在は答えがないようだが、野坂社長は「SNS隆盛の時代に、別の方策がないのか、社員には知恵を出しなさいと言っている」とし、「我々にとっては分かれ道で、口コミを活用できないのかと。僕らの進化が問われるところだと思っている」と危機感もあらわにする。

UQ mobileの現状は表向き、高いCM好感度、契約者数の急増を背景に、まさにイケイケ状態だが、これから先は手腕が問われるというのがリアルなところ。あとひとつ、大きな武器が欲しいというのが本音のようだ。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。